第3回となる今回は、昭和書体より「
玄武(げんぶ)」を紹介する。
■玄武の魅力は「カスレ」だけじゃない!?
玄武とは、行書体に近いデザインで、ソフトな筆致の毛筆フォントだ。
昭和書体には、直筆の毛筆特有のカスレをより精緻に再現した
「高解像度書体」に分類される書体群があるが、玄武もそのひとつ。
筆文字ならではの魅力を何十倍にも引き立てるカスレが
鮮明に再現されているだけでもこのフォントの価値は高いが、
玄武特有の価値や強みはそれだけじゃない。
他の昭和書体のフォントと違う、
玄武特有の個性とはどのようなところにあるのか、
筆者のtakumiが独自に分析したので、ここからはそれを話そう。
■ソフトな筆致、だけど安定のデザイン
玄武の強みのひとつとして、かな文字と漢字の大きさが
きれいに揃っていることが挙げられる。
大抵の毛筆フォントは、漢字よりかな文字が小さめに作られている。
この文字の大きさの違いが文章にリズムを生み、
文脈を追いかけやすくなるのだ。
これは毛筆の「フォント」だけに見られる特色ではなく、
毛筆で文字を書く時の一般的なルールでもある。
一方、見出しやキャッチコピーにおいては、
「文字の並びの美しさ」が目につきやすい。
そのため、かな文字・漢字の大きさに差があると、
目を引くための見出しやキャッチコピーが貧弱に見えてしまうことも…。
しかし玄武は、かな文字と漢字の大きさがほぼ均一、
かつ細すぎず太すぎない、適度な太さで設計されている。
そのため、印刷物の見出しやキャッチコピー、短めのボディコピーに加え、
“映え”を狙ったSNS画像、
さらにはドラマやアニメなどの動画のテロップまで、
多くの用途に柔軟に対応できる点もメリットといえる。
■適度な毛筆感、申し分のない存在感
昭和書体のフォントの多くに共通した強みは、
書き下ろしと見間違えるような「リアルな毛筆感」。
その毛筆感を表現するための肝といえるカスレが、
玄武では程良く再現されている。
これにより、文字サイズを大きくすればカスレが活きて迫力が生まれるし、
小さくすればカスレが目立たなくなり、読みやすくなるのだ。
「毛筆感・手書き感にあふれたフォントが使いたいけど、
汎用性もある程度担保されたものが良い」
手書き、行書体故のクセが比較的少なく適度な太さで設計された玄武は、
そんな贅沢な需要にも応えてくれるだろう。
デザインの定番フォントとしても採用しやすいと思うので、一度使ってみてほしい。
それでは、また次のコラムでお会いしましょう! ィヨロシク!!
【サンプル画像で使用した素材】
本コラム内のフォントサンプル画像には、
J-Font.comで提供されている下記のデザイン素材を使用しました。
・010104_短波線
・010106_ジグザグ線
・010107_はらい線
・010124_渦
・020144_産地直送1