第1回となる今回は、昭和書体より「
昭和楷書」を紹介する。
■これぞ昭和書体の「顔」
昭和楷書は、印刷物、Web、動画、アニメ・ゲームなど、
さまざまな場面で使用例が見られる人気のフォントだ。
昭和書体と聞いた時、真っ先に思い浮かぶのは昭和楷書、という人も多いんじゃないだろうか。
上のサンプル画像からも感じていただけたかと思うが、温かく、優しい雰囲気にあふれている。
どのようなフォントか、詳しく見ていこう。
■温かみの秘密は“アナログ”にあり
他社からリリースされている毛筆フォントの中には、
定規やコンパスを使って書いたのかと思うくらい、
文字の輪郭が整い過ぎていて機械っぽく見えるものが多くある。
直筆をベースに作ってはいるものの、すべての文字をよりきれいに仕上げるため、
コンピュータ上で文字の輪郭を整えるプロセスがあるのだろう。
ただそのような調整をした毛筆フォントは、毛筆感があるにはあるけど、
一番欲しい温かみがなぜか感じられず、むしろ冷たく思えることもしばしば…。
しかし昭和楷書は余計な調整を加えず、書家の直筆をそのままフォント化しているので、
繊細な「とめ」「はね」「はらい」に加え、文字の輪郭の歪みまでもがしっかり残されている。
そのため、「温かみ」や「優しさ」のみならず、「厳しさ」や「固い信念」など、
デジタルではできないあらゆる「人の色」や「心の色」が、昭和楷書であれば表現できるのだ。
■シンプル、だから使いやすい
筆の動きは豪快だが他の昭和書体のフォントと比べると個性は控えめなので、
どんなデザインにも自然と馴染んでくれるだろう。
さらに文字が太くクセが少ないので、可読性・視認性の両方にすぐれており、
文字の字幅・字高がほぼ均一なため、縦書き・横書きのどちらで組んでもきれいに見える。
また、漢字・かな文字ともに、文字の大きさが揃っているので、
字間をツメるなど細かい処理を施さなくても無理なく読むことができる。
印刷物のみならず、近年需要が高いオンスクリーンでの使い勝手が良いのもポイントだ。
フォント初心者でも扱いやすいので、パソコンに標準で入っているフォント以外は
使ったことがないという方にもおすすめしたい。
今回紹介した昭和楷書は、数ある昭和書体のフォントの中では
オーソドックスなデザインなので、幅広く使えると思う。
これから昭和書体のフォントを使おうと思っているけど
たくさんあり過ぎてどれを選べば良いかわからないという人も、
入門編としてぜひ昭和楷書を使ってみてほしい。
それでは、また次のコラムでお会いしましょう! ィヨロシク!!
【サンプル画像で使用した素材】
本コラム内のフォントサンプル画像には、
J-Font.comで提供されている下記のデザイン素材を使用しました。
・010101_筆素材
・010103_しぶき
・010104_短波線
・010108_横線1